井戸と泉

井戸と泉


泉というのは、綺麗な清水がこんこんと湧き出てきている小さな自然の池のことを言います。

もし、その面積が相当大きい場合、たとえ底の方から清水が湧き出していたとしても、それは泉とは呼ばれず、池と呼ばれます。

どの程度の大きさから呼び方が変わってくるのか別に定義はありません。

感覚的なものですが、直径が1m程度であれば、たいてい泉と言われるでしょう、10mもあれば池と言われる場合が多いのではないでしょうか。


清水が湧き出ているということは、地下水の流れが地表近くに出てきているということです。

地層には水を通す砂地の透水層と、水を通さない粘土質の不透水層があります。

地下水は、不透水層の上に接している透水層の下面を流れています。

雨水が透水層を下がって行き、不透水層でさえぎられてその傾斜によって流れているわけです。


泉になりやすいのは、たとえば山の斜面が何かで削られた時に、不透水層の上面を露出してきたような場合です。

もしそこに地下水の流れがあったとすれば、そこからは清水が湧き出してきて、今削られたところに小さな溜まりを作るでしょう。


井戸


地下水の湧き出している所を、人工的に加工した場合、それは泉ではなく。井戸と呼ばれるようになります。

例えば、先の例の泉であっても、貯水量を増すために穴を深く大きく掘り下げ、周りが崩れないように石積みで補強した場合などです。


地表近くに地下水の流れがない場合、穴を深く掘って行ってようやく地下水の流れにぶつかる場合があります。

その穴は、たいていの場合崩れないように石やブロックなどで補強されます。

このように人工的に手が加えられた場合、泉とは言わず、井戸と言われます。

穴の直径1m位で、人がその中に入って掘り進める方式の井戸もあります。

また、地中にパイプを打ち込む方式の井戸もあります。


藤井神社の場合


藤井神社の創建当時、藤井の里と言われる泉のあるところであったようです。

旅人はその泉の水をいただき、すぐそばの藤の木の木陰で涼をとっていたようです。

そもそも藤井神社という名前は、鎌倉時代に藤井大明神と言われていましたように、藤の木のある井戸を特徴とする神社であったわけです。

旅人が涼をとっていたといわれるところからすると、つるべで汲み上げるような井戸というよりは、泉のようなものであったように思われます。

しかし井戸を特徴としているわけですので、結局、きっちりと周りを石組みなどで手を入れた泉、すなわち井戸であったのではないでしょうか。

自然のままの泉ではなく、ある程度美観的にも整えられていたため、水が湧き出すところいうよりも、水を汲みに行くところという雰囲気であったのではないかと思われます。

「藤井」というのは、そのようなところから言われるようになったのではないでしょうか。